技術だけでは終わらせない、エステティシャンの育て方
●仕事を通して、自己成長できる喜びを知ってほしい
スタッフの育成に取り組むなかで、
わたしがもうひとつ大切にしていることがあります。
それは、「この人と出会えてよかった」と思ってもらえる存在でありたい、
という姿勢を持ち続けることです。
実際にそう感じていただけているかどうかは、
正直なところ自分ではわかりません。
それでも、人との出会いを大切にしたいという想いがあるからこそ、
日々できる限りのことを尽くしています。
たとえば、わたしのもとで働くスタッフには、
「ほかのお店から見ても、一緒に働きたいと思われる人材」
へと育ってほしいと考えながら、教育に力を注いできました。
そうした力が身につけば、
将来どこで働くことになっても選択肢が広がりますし、
独立を目指す場合にも活かせるはずです。
結果として、それが業界全体の底上げにも
つながっていくのではないでしょうか。
エステの仕事は、真剣に取り組むほど、
自分自身と向き合う場面が増えていきます。
他人と比べるのではなく、昨日の自分と向き合いながら、
一歩ずつ前に進んでいく仕事とも言えます。
日々の積み重ねのなかで成長を感じられ、
その対価として収入も得られる。
そうした経験を同時に味わえる仕事は、
じつはそう多くありません。
一般的に自己成長を求めるとき、
人は学びの場にお金を払うことが多いものです。
しかしこの仕事では、働きながら学び、
成長していく機会が日常のなかにあります。
その魅力を、ひとりでも多くの人に知ってもらえたらと思い、
日頃からスタッフにも繰り返し伝えています。

●辞めることは成長と収入の両方を経験してから考えても遅くない
もし、この仕事を離れる選択をすることになったとしても、
その前に一度、自己成長と収入の両方を
実感する経験をしてほしいと感じています。
その魅力を体感したうえで、
「自分には合わない」
「そこまで求めていない」
と感じるのであれば、
別の道を選ぶのもひとつの判断でしょう。
これまで多くの人の退職を見てきましたが、
成長の喜びや仕事の奥深さに触れる前に
離れてしまうケースも少なくありませんでした。
言い換えれば、その価値を十分に教わらないまま
辞めていく人も多いように感じます。
技術や売り方は学べても、
「どんな姿勢で仕事と向き合うか」
「成長をどう捉えるか」
といった部分まで伝えられていない職場も
あるのかもしれません。
意識の持ち方ひとつで、
その後の広がりは大きく変わってきます。
どれだけ心を尽くしても、
すべてがお客様に伝わるとは限りません。
それでも続けていける人は、
目の前のお客様の満足を願い、
誠実な技術や接客を積み重ねている人です。
結果だけがすべてではなく、
「お客様のために行動し続けているかどうか」
その姿勢こそが、本質なのではないかと
わたしは考えています。
自分のなかに揺るぎにくい信念が育っていけば、
時代が変わっても迷いにくくなります。
そして、長く続けていく力にも
つながっていくのではないでしょうか。


